日本の農業において、労働力不足の解消や生産性向上への寄与が期待される農業用ドローン。その導入数は年々増加傾向にありますが、運用には航空法をはじめとする複数の法律が関わっています。
本記事では、これからドローンを導入する方に向けて、法規制の全体像と、2025年の制度変更を経た現在の運用について解説します。
2025年11月以前は、国交省認定の民間資格を保有していれば、DIPS(ドローン情報基盤システム)での飛行許可申請において、「知識・能力を確認する資料」の提出を省略(簡略化)することが認められていました。
しかし、2025年12月以降、この「民間資格のみを根拠とした書類省略」の運用は廃止されました。国家資格を持たず民間資格のみで申請を行う場合、従来よりも多くの証明書類を添付する必要が生じ、審査にも時間を要するようになっています。
上記の改正に伴い、業務効率を維持するためには二等無人航空機操縦士(国家資格)の取得が強く推奨される状況となっています。国家資格保有者は、法改正後も引き続きDIPS上での書類省略が可能であり、さらに一部の飛行条件下(DID地区や夜間飛行等)では「許可・承認申請そのものが不要」となるメリットもあります。
※ただし、農薬散布(危険物輸送・物件投下)を行う場合は、国家資格があっても原則として申請が必要です。資格保有者はその手続きが大幅に簡略化されます。
農業でドローンを飛ばす場合、自分の田畑であっても以下の3つの法律が関わります。「私有地だから自由」という認識は誤りですので注意が必要です。
農薬散布ドローンの運用は、航空法において特に厳しい規制の対象となります。農薬の中には「危険物」に該当するものがあり、輸送には規制がかかります。さらに、空中から薬剤や肥料を散布する行為は「物件投下」とみなされます。
これらの行為は、飛行する場所が人口集中地区(DID)であるか否か、あるいは私有地であるかに関わらず、一律で国土交通大臣の承認が必要です。現在は1年間有効な「包括申請」を取得するのが一般的ですが、国家資格がない場合はこの申請手続きのハードルが上がっています。
ドローンによる農薬散布は、農薬取締法(使用基準の遵守)に加え、農林水産省が定めるガイドラインに従って行うことが強く求められます。具体的には、散布を実施する区域や日時、使用する農薬の種類などを記載した「散布計画書」を作成し、関係機関へ提出するのが通例です。
また、農薬が風に乗って隣接する住宅地や他の農作物へ飛散(ドリフト)することを防ぐため、近隣住民への事前周知を徹底することも重要です。これらを怠ると、近隣トラブルの原因になるだけでなく、指導の対象となる可能性があります。
ハードウェア(機体そのもの)に関しては、電波法と機体登録制度への適合が必須です。海外製の並行輸入品などで、日本の「技適マーク」が付いていないプロポや映像伝送装置を使用すると電波法違反となり、処罰の対象となります。
2022年6月以降、100g以上の機体には登録制度が適用されており、現在飛行させる機体には「リモートID」の搭載または内蔵機能の有効化が義務付けられています。これらが適合していない機体は、そもそもDIPSでの登録や飛行申請が受理されません。
※なお、「機体認証制度」はこれとは別の安全性基準の認証であり、取得は任意ですが、前述の「許可申請免除」等のメリットを受けるためには必須となります。
トラブルなく安全に運用するための具体的な手順は以下の通りです。
購入したドローンは、必ず国交省の「DIPS 2.0」で所有者登録を行います。登録記号が発行されたら機体に表示し、リモートIDの書き込みを行います。これを怠ると、そもそも飛行許可申請ができません。
DIPS 2.0を通じて、1年間有効な「包括申請」を行います。国家資格(二等以上)を保有している場合、手続きが簡素化され、短期間で許可が下りるケースが多くなります。一方、国家資格を持たない場合は、操縦者の能力を証明する独自資料の作成や提出が必要となり、許可が下りるまでに2週間〜1ヶ月程度かかるリスクがあるため、余裕を持った計画が必要です。
特定飛行を行う場合、飛行ごとの「日時、場所、機体の状態」などを記録する飛行日誌(フライトログ)の作成・携帯が法律で義務化されています。農薬散布の場合、散布実績の報告も兼ねて、アプリ等で自動記録できるシステムを活用するのが効率的です。
農業用ドローンは「免許(国家資格)なし」でも飛行自体は可能ですが、2025年の制度変更により、申請手続きの手間やコンプライアンス維持のコストが大幅に増大しています。
これから導入を検討する場合は、国家資格の取得を前提に計画を立てるか、あるいは申請手続き等の複雑な部分をサポートしてくれる行政書士やサポートの手厚い販売店に相談することをお勧めします。
法規制は安全のために存在します。正しい知識でリスクを回避し、効率的な農業経営を実現しましょう。
農業用ドローンのメーカー選びの手助けをする当サイトでは、他にも農業用ドローンを導入するなら知っておきたい基礎知識をまとめています。ぜひ参考にしてください。
農業用ドローンは、利用目的に合わせて適切な製品を導入することが重要です。
ここでは、稲作向け・果樹園向け・露地野菜向けといった、目的別に3種類の農業用ドローンを紹介します。


