農業用ドローンを活用した稲作
ここでは、高齢化による人手不足の解消に役立つ農業用ドローンを稲作で活用するメリットについてまとめています。農業用ドローンの課題なども掲載しているので、農業用ドローンの導入を考えている人はぜひ参考にしてみてください。
農業用ドローンで稲作を行うメリット
立ち入りが難しい場所でも利用可能
農業用ドローンは、重機では作業が難しい傾斜地や狭小地でも難なく対応できます。製品によって重さは異なるものの、一般的な重量は12kg程度であることが多く、重機のように運ぶのが難しいなどのデメリットも存在しません。そのため、重機では乗り入れ困難な場所や身体的問題で機械に頼る必要がある人でも、気軽に利用できるでしょう。
データの管理ができる
農業用ドローンには、作物や作業のデータ管理機能が搭載されています。ドローンにカメラを設置するのが絶対条件とはなりますが、稲の生育状況やトラブルの有無などをチェックできるようになるため、取り付けて損はないでしょう。それらをデータ化しておけば病害虫対策などができるため、来シーズンからの稲作に役立てることが可能です。
散布作業を効率化できる
田んぼに雑草が生えていると、稲に十分な栄養を届けられず、お米の美味しさが損なわれる可能性があるため、雑草対策として除草剤を散布することが多いです。これまでは人力で散布作業を行う稲作農家がほとんどでしたが、農業用ドローンは上空から農薬を散布するので、作業効率の向上が期待できます。具体的に、農業用ドローンを使った散布作業の時間は、人力と比べて5分の1程度と非常にスピーディーです。
農業用ドローンの課題
操縦者の不足
農業用ドローンの普及は進められていますが、現場での活用方法をレクチャーする人や操縦者が不足しているのが現状です。ドローンにはルート設定や用途に応じた機体の選び方など、機器選択や使用方法には専門知識が必要となります。しかし、経験豊富な専門家は数少なく、農業用ドローンを活用して稲作を行うには、実際に操縦して慣れるほかありません。
また、近年では、セミナーや講義を行うスク―ルが存在するため、それらを利用して操縦に関する知識や技術を習得するのも重要です。
利用できる農薬の制限
ドローンで農薬の散布を考えている場合、農林水産省によって登録されている農薬以外は使用できないという点にも注意が必要です。具体的に、農業用ドローンは積載重量が少なく、内蔵されているタンクの容量も小さいので、少量かつ高濃度で散布できるもののみ上空での散布が認められています。
とはいえ、近年では散布可能な農薬の登録数も増えているため、今後はより多くの農薬に活用できると考えられます。
海外における稲作用農業ドローンの活用状況
海外では稲作用農業ドローンの活用が急速に進み、効率性向上とコスト削減に貢献しています。各国での普及状況を見ていきましょう。
海外の事例:農薬・肥料の散布
ベトナム(メコンデルタ地域)
メコンデルタでは、農薬散布、作物の施肥、稲の種まきなどの作業でドローンが導入されています。ドローン使用により有害な農薬への曝露を最小限に抑えつつ、より速く効率的な作業が可能となり、米の収穫量向上につながっているとされています。
米国(カリフォルニア州)
カリフォルニア州の稲作農場では、除草剤、殺菌剤、殺虫剤の散布に飛行機が広く利用されています。ドローンの導入により、時間やコストの節約が可能となり、人力よりも効率的に散布できることが大きな利点となっています。
中国
中国の農業用ドローン開発大手「XAG」は、作物散布、監視、マッピング専用のドローンを提供しています。このドローンは日本の兵庫県の水田でも活用されており、種まきや農薬散布、施肥などの農作業をサポートし、労働力不足の緩和と効率向上に貢献しています。
韓国
韓国では2016年頃から肥料や農薬の散布にドローンが利用され始めました。現在では、電信柱付近など飛行困難な場所を除くすべての水稲防除で無人航空防除が実施されている自治体も存在します。
海外の事例:直播栽培(種まき)
ベトナム
稲の種まきにもドローンが活用されています。
米国(カリフォルニア州)
コメ作りにおいて、ほとんどの作付け面積で飛行機を利用した種まきが行われています。
韓国の先進的な取り組み
2018年にドローンによる水稲直播栽培の技術が発表されて以来、実証試験や普及が進んでいます。1ヘクタールを播種するのに10~20分程度しかかからず、従来の動力散粒機よりも非常に効率的です。
ただし、播種の均一度や種もみの破損といった課題も指摘されています。韓国農業技術振興院(KOAT)は、水稲直播栽培に使用できる散粒式ドローンの性能評価制度を確立し、機種ごとの最大積載量や散布量、均一散布性能などを公開しています。
海外の事例:作物の生育状況モニタリング・データ分析
米国
ドローンが農作物の健康状態の管理やデータ分析による収穫量アップに活用されています。上空からの定点観測により、畑や作物の状況を詳細に把握し、将来的なアプローチを可能にしています。様々なセンサーを用いて、作物の成長や土壌の状態など多くの分析が可能となっています。
中国
ドローンに搭載された高度なセンサーと高度な画像処理技術により、農家は作物の最新の健康状態レポートを入手し、農業に関するより良い意思決定を行うことができます。
まとめ
稲作に農業用ドローンを活用すると、これまで人力で行っていた作業負担を軽減できる、作業時間を短縮できるなどのメリットを得られます。ただし、農業用ドローンは普及は進められていますが、操縦者の数も少ないため、能力を十分に発揮できる使い方を学ぶには、セミナーやスクールを利用しなければなりません。
農業用ドローンは将来的に、作業の効率化や生産性アップに欠かせないアイテムになるので、早くから導入するのがおすすめです。