農業用ドローンの活用方法
このカテゴリでは、農業用ドローンが現場でどのように活用されているのか、どんなメリットを得られるのかといった情報を、具体的な導入事例と共にご紹介していきます。
農薬散布
農作業の中でも身体的な負担が大きく、重労働となりやすい農薬散布。高齢化や人手不足が進む農家にとって課題のひとつとなっていますが、農業用ドローンの導入によって明るい兆しが見えてきています。作業負担や作業時間の軽減など、数々のメリットに注目してみてください。
農薬散布のドローン活用事例
1haの圃場に散布するのにかかる時間が10分に
高齢化に伴う農作業の負担を感じ、効率化を考えました。農薬散布では重い動噴を背負い、何日も作業が続くことに不安を抱いていました。
そんな中、農業用ドローンのFLIGHT-AGを知りました。本体価格は100万円以下で、必要な機能が揃っていることが分かり導入を決意しました。
実際に農薬を散布してみると、1haの圃場にかかる時間はわずか10分。体も疲れず、作業後の時間を他の業務に充てられるようになりました。
300haに対する農薬散布をドローンで実施
山口県長門地域では、300haのほ場に対するドローンによる農薬散布を実施。ドローンの導入によって、狭小ほ場を含む中山間地水田ほ場の防除作業の効率化を実現しています。
また、この航空防除事業を進めるにあたって、地域の若手農業者をドローンオペレーターとして養成。教習事業についても、あわせて展開しています。
肥料散布
農薬散布と同じく、重労働のひとつである肥料散布。作物の生育状態に合わせて追肥を行う必要もあるため、負担が大きくなりがちな作業ですが、農業用ドローンの導入で負担を軽減できるケースがあります。実際の導入事例をチェックしてみましょう。
肥料散布のドローン活用事例
10aあたりの散布時間を10分に短縮
福岡市早良区にある馬場ファームでは動力噴霧器による追肥(液肥)を行っていましたが、中山間地の水田への散布作業に負担を感じ、ドローンによる追肥を検討。
(有)ミドリ・(有)然コミュニケーションズとの提携により、ドローンを用いた追肥作業を実施しました。その結果、動力噴霧器で30~60分/10aかかっていた追肥作業を10分で終えることができ、作業負担を軽減できました。
播種
作物の種を、ほ場にまく播種作業。近年では、水稲の種を農業用ドローンでまく直播(ちょくはん)が注目されています。
農業用ドローンによる播種作業のメリットと共に、水稲の直播を導入した事例についてもご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
種まきのドローン活用事例
直播作業に用いることで田植えが不要になる
水田に、種もみを直接まいていく方法を直播と呼びます。この直播作業にドローンを活用することで、稲の苗づくりや田植えの作業が不要となるため、農業従事者の負担が大幅に軽減。
しかも、収穫量については直播機を用いたケースと同等であるというデータもあり、生産性の向上が期待できます。
移植栽培と同等の収量を確保
茨城県の五霞町で水稲とさつまいも栽培を行っている会社では、ドローンを使った水稲の直播を2019年より実施しています。
作付については移植栽培55ha、ドローン直播が20haとなっており、ドローンの直播時間は10aあたり約5分。2021年度の直播における収量は10aあたり540㎏と、移植栽培と同レベルであったとのことです。
活用方法を紹介
受粉
農作物の栽培において、重要な工程となる受粉作業。蜂などの昆虫や風の力、人の手によって行われる作業でしたが、農業用ドローンによる受粉の実験・実用化が進められています。
ドローンで受粉作業を行うことにはどのような利点があるのか、知っておきましょう。
受粉のドローン活用事例
農業用ドローンを用いた梨の溶液授粉の事例
これまで、授粉交配用刷毛である梵天を用いて人工授粉を行っていた梨農家の事例。
人工授粉の適期は3~4日と短く、作業員の高齢化や人員の確保も難しくなってきたことから、農業用ドローンを導入しました。
導入後は、作業員4人で約1日がかりで行っていた10aあたりの受粉作業が、ドローン1機1分程度で終了。短時間で作業できるため、日を分けて数回の受粉作業ができるようにもなりました。
受粉における作業時間の短縮に成功
東光鉄工と名久井農業高校は、液体に花粉を溶かして受粉させる研究実験を実施しました。
使用したのは、東光鉄工の農薬散布機TSV-AQ2。砂糖を加えた花粉を蒸留水・寒天で溶き、その溶液を約5mの高さからリンゴの木に向けて散布しました。
この実験では、1.3aに対する作業時間がドローンで約8分、ハンドスプレーによる手作業では65分という結果に。ただし、手作業よりもドローンのほうが受粉率は低かったため、花粉濃度を高めるといった改良が必要であるとのことです。
農産物運搬
収穫した農産物を、集出荷場や販売所まで運ぶ運搬作業。主にトラクターなどの農業機器や人力によって行われていますが、この作業についても農業用ドローンの活用が始まっています。
農作物運搬におけるドローン活用のメリットと、具体的な事例を見ていきましょう。
農産物運搬のドローン活用事例
約15㎏の農作物運搬に成功
北海道の当別町では、農家の高齢化・人手不足が問題となっており、収穫物の運搬作業の効率化が求められていました。
とくに道の駅が最盛期に入ると、農作物の積み下ろしなどの負担が大きくなることから、ドローン物流を考案。片道約800mの距離を、15㎏ほどの農作物をドローンで運搬する実験が行われました。実験は無事に成功し、今後は農業用ドローンによる輸送時間の軽減や、運搬作業の効率化に期待が集まっています。
ほ場センシング
ほ場センシングとは、作物の生育状況・生育ムラ・倒伏状態などを確認する作業。農業用ドローンを使えば上空からほ場を見渡すことができるため、作業の効率化が見込まれています。
その他にもさまざまなメリットがあるため、導入事例と共にチェックしてみてください。
ほ場センシングのドローン活用事例
汎用型ドローンを活用した広域リモートセンシングの事例
農研機構生研支援センターでは、広域のほ場単位の生育診断を行える、マルチスペクトルカメラ搭載の汎用型ドローンを利用したリモートセンシング技術を開発しました。
この研究開発では、100ha以上の広域リモートセンシングをおよそ2時間で実施。空撮によってほ場を俯瞰的に確認でき、生育状況に合わせて追肥などを行えることが分かりました。
水稲・麦といった作物は、生育状況に応じた適切な追肥により、品質向上および収穫量のアップが見込めるようになります。
この事例からは、農業用ドローンを利用したほ場センシングで作物の生育診断を行うことにより、農業の効率化と収入増が期待できることが示唆されました。
鳥獣害対策
鳥や動物などから、作物を守るために行う鳥獣害対策。人の手だけで行うのはなかなか困難な作業ですが、農業用ドローンを活用することで農作物への被害を抑えられる可能性があります。
どのようなシーンで活用できるのか、具体例を見ていきましょう。
鳥獣害対策のドローン活用事例
水田におけるウミネコ・スズメ対策に効果を発揮
岩手県の沿岸部にある水田では、ウミネコやスズメによる被害が問題となっていました。
そこで、ウミネコ・スズメに対して農業用ドローンを飛行させる防除実験を実施。高度2~3mでドローンを飛行させることにより、音などを使うことなくウミネコやスズメを追い払えたとのことです。
有害鳥獣の場所をドローンで予測・特定
長野県小谷村では、遠赤外線カメラを搭載したドローンで夜間における有害鳥獣の生息状況調査を実施しました。
ドローンの飛行データから有害鳥獣が生息していると思われる場所を特定、その場所を共有することで地域と連携した捕獲作業が可能となりました。
農業用ドローンを活用した稲作
重機が入れない狭小地や傾斜地でお米づくりをしている場合、農業用ドローンを導入することでさまざまなメリットを得られます。もちろん、農業用ドローンは立ち入り困難な場所でも利用できるだけでなく、データ管理や農薬の散布などにも使える優れものです。さまざまな作業で役立つため、操作に慣れるためにも早めに導入すると良いでしょう。
農業用ドローンを求めるなら
用途別に農業用ドローンの活用事例を紹介してきました。自分の農家に合った活用方法をしっかり理解してから導入を進めていきましょう。TOPページでは利用する目的に合わせてオススメの農業用ドローンメーカーを紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。







